こんにちは。
アラサー女子大家 シルクです。
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投資家が「お金」よりも大切にしていること(藤野英人)
この本、実に面白かったです!
まず最初に、私がこの本から学んだことをまとめるならば、
金銭的に豊かになりたければ、人を信じ、誠実であることが大切である
ということかも知れません。
20年以上ファンドマネージャーとしてお仕事をしてきた、
藤野英人さんが「投資のプロ」として「お金の実態」に迫るこの一冊。
タイトルのイメージからして、株式投資やFX、投資信託などに興味がある人以外関係ない内容では?と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません!
「投資家」といっても、全ての人間に関わりがある内容ばかりです。
全ての人間は投資家である
藤野さんいわく、
そもそも投資とは金銭のやり取りだけを指すのではなく、あらゆるエネルギーのやり取りを指して投資
だと言います。
仮に、金銭面にフォーカスしても
消費活動は投資の一貫であり、消費をせずに生きている人間は誰ひとりとして居ない
ので、その理論に基づけば、
全ての人間は投資家であると言うことが出来るのです。
この本を読むことで得られるものは、
決して具体的な投資ノウハウなどではなく、
誰もが毎日接する「お金」というものについての捉え方・考え方を見直せる機会です。
日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目
「お金」の捉え方を見直すという意味で、特に面白かったのが、
- 第一章「日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目」
- 第二章「日本をダメにする『清貧の思想』」
の章です。
この章では、私たち日本人のお金に対する価値観をかなり鋭く指摘しています。
藤野さんが大学で講義を担当している時、生徒のうち8割の学生が「お金儲け=悪」だと思っているといいます。
つまり、世の中は「清貧(せいひん・清く貧しく)」か「汚豊(おほう・汚く豊かに)」2択だと思っている人が多いということです。
それを単純化した
- NGO・NPO=清貧
- 一般企業・金儲け=汚豊
という誤解が存在しており、
一般企業での産業を否定し(別の章でブラック企業の成り立ちなどにも触れています)、
安易にNGOやNPOに携わりたいという学生も居るそうです。
藤野さんはファンドマネージャーとして多くの会社経営者の方と出会ってきた傍ら、NPOの理事も務められてきた方です。
会社経営とNPOの両側面から見てきた経験上、こういった学生さんの思想を否定しています。
※NGOやNPO自体を否定しているわけではありません。
「一般企業・金儲け=汚豊」という考え方は間違っており、実際に世の中の成長し続けている会社は、とても真面目で「清豊」な思想をもった経営者が率いているといいます。
「真面目」とは一体何か?
今「真面目」というキーワードが出てきましたが、この本の中で「真面目」の定義をきちんと話しているのも印象的です。
よく「日本人は真面目だ」と聞くことがありますが、真面目の本来の意味(広辞苑)とは
「真剣な態度、顔つき。本気。まごころがこもっていること、誠実なこと」
だそうです。
つまり、言われたとおりにやることやルールや規則を守ること、常識をわきまえることなどは、真面目の本来の意味に無いのです。
「人を信じずお金だけを信じる」
そんな人が多い日本は、むしろ不真面目だというのが凄く印象に残りました。
なお、「人を信じずお金だけを信じる」というのは、諸外国と比べて日本人は
- 成人ひとりあたりの寄付額が少ないこと
- 預貯金額(=株式など他の形態にしていない資産)が非常に多い
という日本の実態から来ている見解です。
預貯金額が多いということは、株式や債券など、他人や社会と関わる形に資産を分散していないということなのです。
奇跡を起こすのは神様ではなく人である
また、これらの「人を信じない」というところから紹介されていた寓話がとても刺激的で、明快でした。
こちらは、作者不明の寓話ということで、引用させて頂きます。
「谷底の神父」
ある谷底に教会がありました。
そこにいる神父さんは、その教会に、
そして、その地域の為に、何十年と力をつくしていました。ある時、数百年に一度という大洪水が、その教会がある地域にやってきました。
谷底には、どんどん水があふれてきます。
村人がその神父さんを助けにきて言いました。
「神父さん!!早く逃げましょう。今なら丘の上にいけば助かりますよ」
しかし、神父さんは
「大丈夫です。私はずっと神様を信じていますから、絶対に奇跡が起こります」
そういって、谷底の教会に残り、お祈りを続けました。
しかし、神父さんが祈っても、洪水の水は一向に引く気配がありません。
ついに、洪水の水は神父さんの足元まできました。
すると、ボートに乗った村人が神父さんを助けにきました。
「神父さん!危ないです!このボートに乗って逃げましょう!!」
と助けに来てくれました。
それでも、神父さんは
「いや、大丈夫です。必ず神様が助けてくれますから、心配しないでください。」
そういって、神父さんは屋根にあがり、お祈りを続けます。
いよいよ、水は教会の屋根の上まできました。
そこに村人がヘリコプターに乗り、縄ばしごを垂らしていいました。
「神父さん!!死んでしまうから、はしごにつかまってください!本当に助けたいんです」
しかし、神父さんは
「大丈夫です。必ず神様が助けに来てくれます」
と言って、助けを断ります。
その後、神父さんは亡くなりました。
何十年も神様にお祈りしていた神父さんは、天国の入り口で神様に質問しました。
「私はずっと神様のためにお祈りをしてきたのに、どうして奇跡は起きなかったのですか!?」
すると神様は答えました。
「三回も助けてやったぞ」
少し刺激的ですが、ハッとする寓話でした。
どんなときも、社会において人の周りに居るのは人なのです。
藤野さんは、この本の中で「お金」をキーワードに、人生おいて大切で本質的な話をしてくださっています。
経済とは「互恵関係」であり、「お金を通してみんなの幸せを考えること」。
仕事に限らず、「良き消費者」であることの大切さなど、とても身近なところからその事実を説いています。
この「日本」という国の経済や国民性にフォーカスした素晴らしい一冊です。
是非、すべての日本人に読んでもらいたいと思う良書でした。